皇帝という“神”が誕生した時代(ネロ帝・1世紀)
紀元1世紀、ローマ帝国に“皇帝=神”という思想が生まれた瞬間。
ネロ帝の時代は、暴君イメージとは裏腹に「皇帝神格化プロパガンダの起点」。
本章では、ネロの時代背景と、神の化身としての皇帝が誕生する流れを追う。
ネロ帝(西暦54〜68年)
ネロ帝(西暦54〜68年)は“暴君”イメージが強いけど、
実は 「皇帝=神の化身」=アポテオーシス思想が広まった初期段階。
皇帝は政治家ではなく、
「世界を支配する神の代理人」として扱われ始める。
まだローマは超強国。
でも内部ではすでにねじれや腐敗の兆しが出ていた時代。
→ この章は、「皇帝=神」という後のプロパガンダの原点。

西暦54-68
帝政ローマ
皇帝ネロ
地球儀に乗るワシ(世界を統ベル神としての皇帝)
皇帝の神格化(=アポテオーシス)
ブロンズ
10.03
25mm
トラキア ペリントス鋳造

混迷ローマと“裏のエジプト経済”が動いた時代
3世紀ローマ帝国は“軍人皇帝が乱立するカオス期”。
その中でプロブスは、エジプトやアナトリアを再確保し、
破綻寸前のローマ経済を支えた「静かな名君」。
プロブス帝(276〜282年)— 軍人皇帝時代の末期
3世紀のローマは超カオス。
「軍隊の支持=即位権」という狂った時代で、皇帝がコロコロ変わる。
その最後期に現れたのがプロブス。
彼の治世は改革・軍制整備が進み「帝国の立て直しの土台」になった

276-277
ローマ帝国
プロブス帝
アナトリアとエジプトを回復した最後の軍人皇帝
ワシと月桂冠で神聖性を演出
テトラドラクマ
ビロン貨
7.59g
ディオクレティアヌスの大改革(帝国再建の黄金期:AD 284〜305)
ローマは一度“バグった帝国”を完全に再建した。
ディオクレティアヌス(284〜305年)
ディオクレティアヌスは、崩壊寸前のローマを再建しようとした天才。
彼は皇帝の権威を“神の象徴”で補強し直した。
放射冠(レイディエイトクラウン)は太陽神ソルの象徴で、
「皇帝=神から選ばれた存在」というメッセージ。
宗教と権力をリンクさせて、国家を再起動した。

284-295年
ローマ帝国
ディオクレティアヌス帝
放射冠は太陽神ソルとの同一化
軍人皇帝時代の終わりとローマ再生の第一声
アントニニアヌス
ビロン貨
マクシミアヌス & ディオクレティアヌス(291〜295年)— 二頭制(ダイアーキー)の確立
帝国を東西で分けて統治。
ここからローマ帝国は“中央集権の見直し”に入る。
2人の皇帝による再建プロジェクトが始まる。

291−295年
ローマ帝国
マクシミアヌス帝
裏:ヘラクレス(棍棒立像)
”2人のアウグストゥスの勇敢さ
(マクシミアヌス&ディオクレティアヌス)
東帝と西帝による再建時代(テトラルキア)
アントニニアヌス
銀貨(ビロン)
3.47g

マクシミアヌスがヘラクレスに
ディオクレティアヌスがユピテルに見立てられた
神話的統治
ガレリウス(295〜299年)— 再建の実務担当者
ガレリウスは、四帝分治制(テトラルキア)の中核。
ディオクレティアヌスの改革を実行した人物。
ここで帝国は、
軍・税制・行政がほぼ完全に再構築された。

295-299年
ローマ帝国
ガレリウス尊き副帝
”軍の調和”
皇帝と兵士が握手をして軍旗を挟む
テトラルキア(東西の四帝政)で帝国最興期
ギュデコスはトルコ西部の軍事拠点だった
1/2フォリス
ブロンズ貨
2.7g
ディオクレティアヌス AE3(296〜305年)— 帝国権威の最終形
皇帝の後ろに守護神が描かれる。象徴政治が完成するタイミング。
ここまででローマ帝国は
「古いローマ」→「神権的ローマ」へ。

296-305年
ローマ皇帝
ディオクレティアヌス
月桂冠(太陽神の後継であり長らく権威ではなく秩序の守護者として)
裏はローマの守護精霊
みんとマークの横の「🌙」もポイント
フォリス貨
ガレリウス(アレクサンドリア・スタイル:305〜306)
アレクサンドリア風の肖像は、
地域文化をローマが吸収し始めたことを示す。
ローマ帝国は“統治の多様化”に入っていく。

305−306年
ガレリウス帝
”軍の調和”
皇帝の”首の太さ”はアレクサンドリア特有の写実(エジプト特有の文化)
彫刻師たちがエジプトやギリシャ系だったため
フラクション
1/20 アルゲンテウス
青銅貨
2.95g
◆ コンスタンティヌスと“新しいローマ”の誕生(330年代〜)
キリスト教の公認、軍の再組織、首都の移転。
コンスタンティヌスはローマ帝国の針路を大きく変え、
“古代ローマ”から“キリスト教帝国”への転換点となった。
コンスタンティヌス大帝(330–333)
兵士と軍旗を描くこのシリーズは、
「帝国を支えるのは軍の結束」という強烈なメッセージを放つ。

330-333年
ローマ帝国
コンスタンティヌス大帝
”軍の栄光”シリーズ
首都を遷都した直後
ヘラクレアは東ローマの重要な兵站都市なので軍用銅貨が盛んに作られた
フォリス貨
ブロンズ
3.12g
コンスタンティヌス & 息子たち(330–337)— 家族統治の始まり
コンスタンティヌスの息子たちが政治の表舞台に登場。
ローマ帝国は“家の支配”へと舵を切り始める。

330-337年
ローマ帝国
コンスタンティヌス
息子たち”軍の忠誠と帝国の平和”
軍旗と槍を持つ兵は分裂する帝国軍による秩序が支えている
フォリス貨
青銅
2.87g
コンスタンティウス2世(348–350)— 平和の再興を祈る時代
300年近い混乱と改革の波を越え、
ローマはもう一度“安定の息吹”を取り戻そうとしていた。
それがFEL TEMP(幸福の時代)の願いでもある。

348-350年
ローマ帝国
コンスタンティウス2世
(宝石冠)ティアテム
”幸福なる時代の再興”シリーズ
兵士が倒された蛮族をやりで突く
ブロンズ
4.4g
フォリス貨
まとめ(3ポイント)
- 皇帝=神という思想はネロ時代に芽生え、ローマ支配のいしになった。
- 軍人皇帝時代の混迷を、ディオクレティアヌスらが“国家再インストール”で立て直した。
- コンスタンティヌスが信仰と軍制を統合し、“新しいローマ世界=キリスト教帝国”を築いた。


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