珍品入荷タバリスタン地方の小王朝《ダブヤ朝・クルシード王》ヘミドラクマ銀貨

01古代

この記事では、8世紀のタバリスタン地方で発行された《ダブヤ朝・クルシード王期ヘミドラクマ銀貨》について解説します。信仰と生活を守るために命を懸けた“最後のゾロアスター王”の矜恃と、現代に通じる歴史的意義を深掘りします。

珍品入荷タバリスタン地方の小王朝《ダブヤ朝・クルシード王》ヘミドラクマ銀貨
【信仰と誇りのために自死を選択!山に籠もり、火を護り、イスラムに抗った“最後のゾロアスター王”】が現代に訴えかけるモノ

〜さて、今日も歴史とコインを愛でるひととき〜
一緒に楽しんでいただけたら光栄です♡︎

《背景》時は8世紀。

ペルシア世界はウマイヤ朝からアッバース朝に変わったばかりのイスラーム帝国が実権を握っていた。今回の舞台はカスピ海沿岸、今のイラン北部の山岳地帯・タバリスタン地方

山岳・部族社会・外部支配の届かない空間で、人々はササーン朝時代のゾロアスター教+土着宗教とともに、儀礼や体験を重んじ、多神教・自然信仰的な村落共同生活による自治を行っていた…。

そんな中で、迫り来る”強権・アッバース朝”による改宗への圧力。そんな中で生まれた銀貨にこめられたメッセージとは?


そして、現代の中東情勢にも影響を与えている”歴史のアイロニー”も凄かった…!

アッバース朝時代のイラン北部・タバリスタン地方

まず、このコインのこと アッバース朝時代のイラン北部・タバリスタン地方。地方国家ダブヤ朝のクルシード王(740–761)の下で発行されていたタバリスタン独自の「ササン朝系ヘミドラクマ銀貨」

ゾロアスター教意匠のコイン

▶︎独自鋳造なので(イスラム教アッバース朝の中で)異色の《ゾロアスター教意匠のコイン》
[表面: 王の肖像]
威厳ある横顔=支配者の資格
王族の服飾=伝統の継承

[裏面: 拝火壇と従者]
拝火壇=アフラ・マズダーの火
従者=信仰共同体+王の祭司的役割
土台+柱=宇宙秩序と王の位置づけ

何が買えた?
・ワイン壺 約3L
・羊の肉1日分
・炊事用木材1束
▶︎庶民の日常生活のための地域通貨!

タバリスタン銀貨に秘められた3つの意味

① 宗教:拝火壇=ゾロアスターの灯を守る
② 政治:ササン風で「俺たちはイスラム教には屈しない!正統」アピール
③ 経済:民衆生活に根ざしたリアルな少額通貨

→ 文化的抵抗の武器として生まれた独自通貨だった
▶︎抗う王様、抗うコイン…面白くなってくるでしょ?その後、タバリスタン地方に待ち受ける運命も深い!!

↓《信仰とコイン》にまつわる激ヤバなお話です↓

〜そもそもゾロアスター教って?〜

BC7c、イラン高原に発祥。’現存する世界最古の宗教’とも言われるゾロアスター教(拝火教)。善神アフラ・マズダーと悪神アンラ・マンユの二元論を軸に、「善き思い・善き言葉・善き行い」を実践し、魂の選別と世界の浄化を目指す。火と清浄性を重視し、拝火壇での儀式が有名。終末には救世主が現れ、悪は滅ぼされ、世界は善に満ちた新生を迎えると信じられている。善悪二元論に基づく教義は、後の一神教にも大きな影響を与えた。

そんなゾロアスター教を擁するペルシア帝国、ササン朝も642年にイスラーム軍に敗北ただしカスピ海沿岸の山岳地帯では”閉鎖的空間=信仰の避難所”のように、これまでの宗教が残った……!

地理的条件+地方王朝=ゆるやかに信仰が混在
▶︎結果、7世紀以降のタバリスタンは《拝火教+ザイド派イスラム+仏教・マニ教》の混在地帯に
↑ちなみにこのザイド派イスラムが、現代とリンクする、激ヤバ接合ポイントにもなってきます

肖像になっているダブヤ朝クルシード王(在位740〜761)って誰?

▶︎山の王、太陽の名をもつ最後の光

・信仰を守った”ゾロアスター教・最後の王”
・アッバース朝カリフ制の圧力に対しゲリラ戦と交渉で粘る
・火壇を刻んだ銀貨で文化的抵抗を続けた
・最期は毒をあおり自死、誇りを守って退場する

最初のイスラーム王朝(ウマイヤ朝)は圧力緩かったのだが、《宗教と国家の最高指導者=カリフ》を名乗るアッバース朝は、帝国内の異教に改宗への弾圧をかけた。
タバリスタンの他の王朝は真っ向対立を避けたが、クルシード王のみが抵抗し、自死することになる。

発行年代のポイントと王の生涯

発行年代のポイント
❶ アッバース朝の圧力と反抗(743〜755年) アッバース朝がカスピ海一帯に圧力強める中、クルシードは形式上の従属を受け入れつつも実質独立状態をキープ。「銀貨を鋳造して税の代わりに納める」など。

❷ 755年:裏切りの使者事件 カリフが送った使者に対し、クルシードは表向き歓迎→裏で拘束&帰国拒否という冷静かつ大胆な対応。この事件が、タバリスタンへの大規模侵攻の引き金に。

❸ 最期:毒と自死(761年頃) 国都アムルが陥落し、クルシードは山中へ逃亡。最後は捕らえられる前に、毒をあおって自害したと言われる。このコインは、クルシード王時代の最後に鋳造されていたもの。 ↓更にdigると、歴史のロマンが見えてくる

王が命懸けで守ろうとしたもの:信仰と暮らしの一体性

ロマンを感じるポイント《クルシード王が命懸けで護ろうとしたものの正体》とは?
▶︎「他の王朝みたいに、緩やかに降伏して順応」でも良かったじゃん?イスラムに抗ったのは…王としての名誉、プライド?信教の自由のため?

〜いや、もっと深く捉えるなら《国民の暮らし》そのものかもしれない!〜

▶︎実はタバリスタン地方の主産業は林業や薬草、香料づくりなど。

全て自然界が人々に与えてくれる生業

文化・信仰・政治がつながる統治のあり方

ゾロアスター教では、炎=山の霊性の象徴ととらえていた

高山に神殿を置き、火を拝むことによって生活基盤を維持し《生活の糧(山との暮らし)と宗教》がとっても密接だったの。


つまり火・水・風の精霊(自然)への祈りは、《自分たちの命そのもの》同時に、春分・夏至など自然暦に基づいた祝祭も行われ【王権が祭司を兼ねていた】
(日本の新嘗祭と天皇の関係が分かりやすいかも)

▶︎ クルシード王には《人々と神をつなぐ役割を果たす責務》がある!! すなわち、
【国の民の生きること、食べること祈りの文化まるごと】に対してめちゃめちゃ責任を感じてたからゾロアスター教を堅持しようとしてた

とも言える

民の生活様式=宗教儀礼=王の政治的役割が全部つながってたから。
国がイスラーム化することは、命の全体系を破壊することを意味した

ということ。だから、外圧に抗っていた…… という、文化と命を結ぶ矜恃と責任が浮き彫りに

王/天皇は「生産(農・林)」と「信仰」の接点に立つ存在

祭りの執行=支配の正統性そのもの

▶︎ “共同体としての生活スタイルを守る”ことが、イスラーム帝国相手にタイマンを張った王の生き様に繋がるのではないだろうか。。

現代日本への示唆:クルシード王ならどう考えるか

2025年、極東の米騒動に想いを馳せる。 目先の利益にとらわれる政治家ーー海外に媚びへつらい、日本の生命線ともいえるコメを売り、国民が飢えている実態…。
文化や誇りを軽んじた減反政策…。 農家が育てた米は、時間を置いては政治パフォーマンスに使われ、本来【国の民が安心して生きること、食べることのできる社会】は何処へ?
(たぶんクルシード王だったらめっちゃ怒ってるよ)

▶︎今の日本で、政治にも外国にも国際金融資本にも何も言えない╱できないパフォーマンス系の権力者や皇族って、そもそもいる意味…

(おっと誰か来たようだ)

ザイド派への継承と歴史のアイロニー

クルシード王の死後、タバリスタン地方は自治を守りつつ、民兵や支持民衆による山岳地帯での局地的抵抗が継続。
イスラム教を受け入れることになった彼らが選んだのが、割と捉え方が近かった《行動主義(蜂起の正当性)を重視するザイド派》。

▶︎少し省略すると……そのザイド派の思想的源流が、現代のフーシ派(イエメン)やヒズボラ(レバノン)などの【外部からの侵略に抵抗・行動するシーア派思想】を作っている

▶︎イスラム教に包囲されたタバリスタン地方の《最後まで抗う信仰》が、1300年の年月を経て、今度は逆に《諸外国に包囲されたイスラム世界》の信仰的要塞になっていると思うと、歴史のアイロニーを感じますよね

というわけで、今回紹介した ╲《ゾロアスター教 最後のコイン》╱ いかがでしたか? この1枚のコインに祈りと願いが詰まってる!……って思うとロマン感じますよね

実物は店頭でご覧いただけます♪ 歴史のストーリーや現代との繋がりを知ると、 人生ってもっと豊かに楽しくなるはず

次回をお楽しみに♡︎

この記事の要約5ポイント

現代への示唆と歴史の継承
 クルシードの抵抗は後のザイド派思想につながり、現代の中東情勢にも影響。文化や誇りを軽視する現代日本への対比としても示唆的。
引用元
本記事で紹介したポストはこちら:

クルシード王の抵抗と独自通貨
 アッバース朝の圧力下でも独自鋳造のゾロアスター教意匠銀貨(ヘミドラクマ)を発行し、形式上の従属を受けつつも実質独立を維持。

裏切りの使者事件と最期
 755年、カリフからの使者を拘束したことで大規模侵攻を招き、最終的に国都陥落後、捕縛を避けるため自害。

信仰と生活の一体性
 山岳民の林業や薬草産業と結びついたゾロアスター教信仰を守ることが、王の統治と民の暮らしを支える柱だった。

文化と政治の交差点としての王権
 王が「祭司」として共同体の精神的支柱となり、生活・信仰・統治が一体化した世界観を体現していた。

引用元
本記事で紹介したポストはこちら:

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